太陽光発電業者の倒産は今後も続くのか
固定価格買取制度の施行で一気に増えた太陽光発電業者ですが、倒産・撤退も急増しています。
急激な成長を遂げた太陽光発電業界ですが、売電価格の引き下げの影響で徐々に勢いが衰える中、業者の淘汰が進んでいるともいえます。
この傾向は今後も続くのでしょうか?
太陽光発電業者の倒産・撤退が急増!
太陽光発電関連の倒産件数は、2016年後半から一気に増え、2019年は前年度よりは減ったものの、2020年上期にまた増加傾向に転じ、以降ほぼ横ばいの状態が続いています。
(帝国データバンク資料より抜粋)
2006年からの半期ごとの倒産件数の推移は以下のようになります。
(帝国データバンク資料より作成)
だいぶ淘汰が進んだ印象がありますが、ここ数年の倒産には大きな特徴があります。それは、大型倒産が発生している点です。
産業用など、大型案件も取り扱っている企業の倒産が出てきているとみて良いでしょう。
その他、業歴では15年未満が6割以上を占め、太陽光バブルに乗って参入した新規業者とみられています。
倒産前に撤退する業者も多いことから、設置した業者がアフターサービスをしてくれない、あるいは連絡がつかない等のデメリットは更に大きくなることが予想できます。
実際に倒産しそうな業者を見極めることは困難ですが、倒産した業者の傾向を分析し、少しでもリスクを減らす事が大切です。
倒産した業者の傾向
帝国データバンクの資料から、倒産した業者の傾向が見えてきます。
資本金が少ない(中小規模の)業者が多い
倒産した業者の多くは資本金が5千万未満で、全体の90%以上を占めています。(調査対象は2006年〜2020年6月に倒産した499件)
また、半数近くが1千万〜5千万未満となっていて、「中小企業ではあるがそこそこの規模」の業者の倒産が際立っています。
倒産理由は「販売不振」がほとんど
こちらの調査は、2006年〜2020年6月までの499件が調査対象となっていて、大多数の366件が「販売不振」が原因としています。
営業年数が短い
左のグラフは、2016年6月に帝国データバンクが公表した「太陽光発電を主な事業としている業者の倒産傾向」です。(調査対象は2006年〜2016年5月)
営業年数の短い業者(10年未満)の倒産が約7割を占めています。
対して、2020年上期のみのデータはこちら。
明らかな変化がわかかると思います。
データから見える業者の倒産パターン
- 太陽光発電ブームで新規参入(営業年数の短さ)
- 価格を引き下げ、薄利多売で業績を伸ばす
- ブームが落ち着き、以前ほど勢い良く売れなくなる(販売不振)
- 資金繰りに行き詰まり、倒産
全ての業者に当てはまるわけはありませんが、このパターンが最も多いと予測できます。
業者倒産のリスク
頭金の持ち逃げ
最悪のパターンですが、契約後に頭金だけ受け取り、着工しないまま倒産されるリスクがあります。
この場合、当然頭金の返金は難しいでしょう。
かといって、頭金を請求する業者全てが倒産危機ではありません。
太陽光発電の場合は、半額程度の頭金を納入することが一般的です。
業者はユーザーから受け取った頭金で、『そのユーザーのオーダーメイド太陽光発電』をメーカーに発注します。
あまりにも倒産リスクを懸念しすぎて、頭金の支払いをしなくなってしまうと、優良業者も資金繰りが苦しくなってしまいます。
手抜き工事やメーカー保証対象外の工事
人件費の削減のため少ない人数で工事を行ったり、管理体制が疎かになってしまうと、手抜き工事や保証対象外の工事の危険性があります。
手抜き工事で先々雨漏りが起こっても、当の業者が倒産していては補償も期待できませんし、メーカー保証の聞かない工事では修理できても余計な費用負担がかかってしまいます。
シミュレーション値の上乗せ
本来であればメリットの出ないような設置kw数や設置条件で、太陽光発電に向かないお宅であっても、資金の厳しい業者であれば契約を取りたくなります。
当然、正直に『メリットはありませんが契約して下さい』とは言わないでしょうし、経済メリット以外を設置目的(災害時の備え等)としている方は以外は言われたところで契約する方はいないと思います。
では、どうするか・・・?メリットがあるように細工してしまえばいいのです。
シミュレーション値を上乗せし、実際には出ないメリットが出るように見せかけ、契約を迫ります。
実際、悪徳業者や訪問販売で契約し、『シミュレーションほど発電しない』トラブルは数多くあります。
アフターサービスや施工補償の不実施
業者が倒産してしまうと、全ての約束が履行されないと覚悟しておきましょう。
無料点検や雨漏り等の補償等、倒産してしまえば何に意味もありません。
あるいは、業者は履行出来ないことをわかった上で、契約欲しさにウマイ話をしているのかもしれません。
施工補償については、業者が倒産しても補償が引き継がれるようあ保険内容であれば問題ありませんが、資金繰りの厳しい業者がそこまで補償にお金を掛けているとは考えにくいですし、極端に多い無料点検も、人件費や手間を考えると現実味がありません。
アフターサービスや補償は、業者が健全であればこその安心です。
業者倒産リスクのまとめ
業者が倒産してしまうと、お金や信頼、安心等、すべてのものが失われてしまいます。
売電価格の引き下げが続き、太陽光発電もブームではなくなりました。
一時期の様に『設置すれば売電で必ず元が取れる・メリットがある』状態ではなく、じっくりと設置費用やメンテナンスを含めた維持費はもちろん、信頼できる業者かどうかを見極める時期に来ています。
今後も倒産は続く?
太陽光発電業界そのものが非常に厳しい状態ですので、今後も倒産は続くと思われます。
ただし、2017年の上半期の倒産件数は50件(前年同期比117.4%増)に対し、下半期は38件(同13.6%減)、さらに2018年上半期は44件(同12%減)となっています。
それ以降、大型倒産はあるものの、倒産件数自体はほぼ横ばい状態。
これは、太陽光発電関連業者の倒産の増加傾向に一定の歯止めがかかったとも見えます。
淘汰が進み、「競争力があり、顧客に選ばれる業者」のみが生き残る時期になっています。
とはいえ、まだまだ油断はできません。
じっくりと時間をかけ、堅実な業者を選ぶようにしてください。